当サイトでは、主にオゾンのメリットを中心に取り上げていますが、物事にはメリットがあれば必ずといっていいほどデメリットも存在します。
オゾンのメリット・デメリットを深く理解したうえで、オゾンが素晴らしいものであると考えているため、オゾンのデメリットや一般的に好ましくないとされる情報もフェアにお伝えしたいと考えています。
今回は一般的にオゾンによる好ましくない現象とされる「オゾンクラック(オゾンによる亀裂)」に関する仕組みや、その防止策などについて書きたいと思います。
ゴムが劣化する原因を知り、防止策を考えることで、「ゴムの劣化を可能な限り回避したい」「ゴムを長持ちさせたい」というあなたのお悩みに対し、お役立ていただければ幸いです。
ゴムが劣化する7つの原因

まずは、何より劣化する7つの原因について知りましょう。
ゴムが劣化する原因はさまざまなものがありますが、代表的な原因は次の7つです。
- 直射日光
- 摩耗
- 大気中のオゾン
- 温度変化
- 湿度
- 油脂や溶剤の付着
- 酸やアルカリ性物質の接触
ゴムの劣化と聞いて、摩耗や温度変化などは多くの方がイメージされたと思いますが、ゴムの劣化原因には多くのものがあり、オゾンもその中のひとつです。
オゾンでゴムが劣化する仕組み
オゾンでゴムが劣化する原因は主にオゾンクラックにあります。
オゾンクラックとは
オゾンクラックとは、オゾンとゴムが化学反応することによって、ゴムの表面に亀裂が入る現象のことです。
少しだけ複雑な言い回しになりますが、より正確に表現するのなら、「オゾンとゴムが化学反応することで分子レベルでの切断が発生する。その切断は応力がかかっている部分へ垂直方向に走る無数の亀裂となる。特に、不飽和構造のゴムは二重結合を主鎖にしており、オゾン耐性が低くオゾンクラックが起きやすい傾向がある」といった説明になります。
オゾンによる劣化と光による酸化における識別方法
ゴムは、太陽の光や紫外線が当たると、オゾン劣化や光酸化劣化という現象が起きます。
オゾン劣化や光酸化劣化は「太陽の光や紫外線で劣化する」という点において似ていますが、亀裂の方向と色については大きく異なります。
劣化現象の種類 | 亀裂の方向 | 色について |
---|---|---|
オゾン劣化 | 応力がかかっている部分へ垂直方向に走る | 関係ない |
光酸化劣化 | 規則性がなくバラバラ | 暗い色より明るい色のほうが劣化しやすい |
光酸化劣化もオゾン劣化と同じように、ゴムに亀裂が入るという点は共通していますが、光酸化劣化の場合は、亀裂の方向に規則性がなく、また、ゴムが明るい色だと光酸化劣化にかかりやすく、暗い色だとかかりにくいという特徴があります。オゾン劣化はゴムの色に関係なく、どんな色でも反応(劣化)します。
オゾンとは
オゾンとはあのオゾン層のオゾンですが、オゾンを簡単に説明するとこのようになります。
- 酸素に似た気体である
- 強力な殺菌作用がある
- 毒性があり人体に直接浴びると危険だが、時間が経つと酸素になって無害になる
効果としては、主に次の6点です。
- 消臭・脱臭効果
- 除菌・殺菌効果
- 忌避効果と繁殖抑制効果
- 鮮度保持効果
- 防カビ効果
- 漂白効果
ただし、良いことばかりでもなく、業務用オゾン発生器などでオゾン濃度が高まると、場合によっては観葉植物などに悪い影響を与えることもあります。
オゾンはオゾン発生器などで人工的に生成することもできますし、日光の当たる場所や高圧電流の近く、湿度の高い場所、水銀灯の下などにも常に存在しています。
たとえば、オフィスの大型コピー機の周辺は、通常より若干オゾン濃度が高い(といってもまったく健康には問題ないレベルです)です。
詳細はここでは割愛しますが、オゾンについてもっと詳しく知りたい方は是非「オゾンとは」をご覧下さい。
オゾン劣化の防止策
オゾンが発生しやすい場所や、大気中のオゾン濃度が高くなる場所で使用するゴムは、オゾン劣化の防止策を無視できません。
オゾン劣化の防止策は主に次の4つが考えられます。
- 二重結合が多いゴムを使用しない
- ワックス
- 保管場所を考慮する
- 老化防止剤
二重結合が多いゴムを使用しない
ゴムが劣化する原因のひとつはオゾンです。二重結合が多いゴムはオゾン耐性が低く(オゾンに弱く劣化しやすい)、劣化しやすいので、二重結合が少ないゴムを使うことで劣化を遅らせることができます。また、二重結合が少ない飽和構造のゴムは、オゾン耐性が高く(オゾンに強く劣化しづらい)、長持ちします。
ワックス
二重結合を持つゴムやオゾン濃度が高い場所で使うゴムには、オゾン劣化を防ぐためにワックスを使う方法があります。ワックスをゴム製品の表面に吹き付けることで、ゴムを保護する皮膜を作ります。この皮膜によって、大気中のオゾンとの接触面積を減らしゴムを守ることができます。
保管場所を考慮する
オゾンが発生しやすい場所や、オゾン濃度が高い場所でゴム製品またはパーツなどを保管しないようにすることでオゾン劣化を未然に防ぎましょう。
たとえば、日光が強く当たる場所、高圧電流の近く、湿度の高い場所、クリーンルームなどオゾン発生器の近く、水銀灯の近くなどは避けて下さい。
また、ゴムの保管については、多くの量を重ねたり、曲げたり、吊るしたりすることは避け、応力がかからない状態で保管することでオゾン劣化の進行速度を遅くすることができます。
老化防止剤
老化防止剤とは、オゾンクラックが生じる過程を防止する役割を持ちます。ゴムを作るときに、老化防止剤を混ぜることでゴムの劣化を防ぎます。これは、オゾンとゴムが反応するのを化学的に抑制するためです。老化防止剤は、ゴムが長持ちするようにするために、製造時に混ぜられることが多いです。
オゾン劣化はゴム製品を長期的に使用するうえで避けられない問題
以上のように、オゾンクラックの仕組みやオゾン劣化に関わる様々な要因や対策について解説してきました。ゴム製品は私たちの生活に欠かせないものであり、その耐久性を高めることは大切な課題です。オゾン劣化はゴム製品を長期的に使用するうえで避けられない問題ですが、適切な対策を行うことで劣化を防止することができます。オゾン劣化の対策には、二重結合の少ないゴムの使用、ワックスによる保護、老化防止剤の使用などがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがありますが、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。
今後も、ゴム製品の耐久性を高めるための取り組みが進められることを期待しましょう。