空気中の汚染物質を除去するためのオゾン発生器と空気清浄機は、似たような役割を持つ2つの機器ですが、その仕組みや効果は実はまったく異なります。
あなたがどちらの機器を選ぶべきかは、あなたが望む目的とこれら2つの機器が果たす役割やその違いについて理解することで、判断できるでしょう。
あるいは、2つの機器を併用するという選択肢もあるのかもしれません。そうした場合、オゾン発生器と空気清浄機のいいとこどり・オールインワンの機器ではダメなのでしょうか。
この記事では、オゾン発生器と空気清浄機の違いについて、徹底的に解説します。それぞれのメリットやデメリット、特徴や効果を正しく知ることで、最適な選択・使い方ができるはずです。

前提
空気清浄機と比較するのであれば、オゾン発生器は人や動物がいる環境(有人環境)で安全に利用できる有人環境専用設計(家庭用などと呼ばれます)のオゾン発生器と比較するのが妥当です。そのため本記事の「オゾン発生器」は有人環境専用設計のオゾン発生器を指すものとします。

それでは、それぞれの機器的な役割や仕組みを理解し、比較してみましょう。

オゾン発生器の機器的な仕組みや役割、得意なこと苦手なこと

オゾン発生器という機器の仕組み・原理、本来の目的や役割、得意なこと・苦手なことなどについて順を追って説明していきます。

オゾン発生器の仕組みと原理

オゾン発生器の原理と仕組み(メカニズム)
オゾン発生器の原理と仕組み(メカニズム)

オゾン発生器の原理と仕組みでも説明されている通り、酸素を原料とし、そこに電気の力を加えてオゾンを生成します。
酸素+電気=オゾン
簡単に表すとこのようなイメージです。

オゾン発生器の目的と役割〜オゾンが得意なこと

オゾン発生器は、オゾンを利用して広範囲の菌の除菌、ウイルスの不活化(感染できない状態にすること)を目的とする機器です。
ここで「あれ、脱臭(消臭)は?」と思った方もいると思いますが、悪臭の原因は概ね「菌の増殖」です。菌の増殖を抑制するか除菌して数を減らす、あるいは完全に消滅させることで悪臭が減退もしくはなくなります。そのため、脱臭は「菌の除菌」に含まれるという点をご理解下さい。

オゾンで高い効果を期待できるものは次の通りです。

  • 広範囲の菌の除菌
  • 広範囲のウイルスの不活化
  • 虫やダニへの忌避効果

カビも菌(真菌)であり、オゾンはカビにも効果てきめんです。
ウイルスもかなり広範囲のものに高い効果を示しますが、新型コロナウイルスもあっさり不活化します(強いエビデンスあり)。あとはアルコールがほぼ効果がないとされるノンエンベロープウイルスのノロウイルスにも効果があります。
ゴキブリやコバエ、ダニ等の害虫については「駆除」はできませんが、忌避効果で目にする機会は著しく低下させることができます。
このあたりをもっと詳しく知りたい方は「オゾンの知るべき5つの特徴」をご覧下さい。

オゾン発生器が苦手なこと

「オゾンに敵なし」というわけではなく、苦手なこともしっかりあります。
オゾン発生器が苦手なことは、花粉・PM2.5・チリやホコリなどの「物理的除去」です。
オゾンは花粉にまったく意味がないことはなく、そのアレルゲンを無害化することなどはできるのですが、物理的存在はそこにそのまま残ります。花粉・PM2.5・チリやホコリなどは対象空間に飛散・浮遊しているその存在自体を除去することが望ましいことを考えれば、オゾンには苦手な問題であり、その問題をオゾン発生器で解決しようと考えるのは正しくないアプローチだといえそうです。

空気清浄機の機器的な仕組みや役割、得意なこと苦手なこと

空気清浄機の機器的な仕組みや役割、得意なこと苦手なこと

空気清浄機という機器の仕組み・原理、本来の目的や役割、得意なこと・苦手なことなどについて順を追って説明していきます。

空気清浄機の仕組みと原理

空気清浄機の構造は「ファン方式」と「電気集塵方式」があります。
詳細は割愛しますが、フィルターに吸着させるという点においては共通しています。

つまり、対象(チリやホコリ等)を機器内部のフィルターに吸着させるなどして物理的に除去します。
そのため、空気清浄機の外観パネルを開けると、内部には必ず集塵フィルターと呼ばれるものが入っています。
対象空間のに浮遊しているチリやホコリなどと一緒に空気を吸い込み、内部の集塵フィルターを通したときに、チリやホコリなどを集塵フィルターで吸着させたあと、ファンによって空気だけを対象空間に循環させる。これが空気清浄機の基本的な仕組みです。

空気清浄機の目的と役割〜空気清浄機が得意なこと

花粉・PM2.5・チリやホコリを物理的に除去すること。
これが空気清浄機の役割であり、存在意義です。
対象空間の花粉・PM2.5・チリやホコリを物理的に除去したいという目的であれば、効果やコスパなどを考慮すると、空気清浄機という機器の右に出る者(物?)はいないと考えてまず間違いありません。
この点はあまり説明が必要ないと思います。空気清浄機の役割というのは、そのくらい明確な役割です。

空気清浄機が苦手なこと

空気清浄機は、菌の除菌やウイルスを不活化することは苦手であり、不向きです。
コロナによって感染対策リテラシーが高まった近年では、脱臭フィルターや抗菌フィルターなど、内部のフィルターを2層または3層に増やすなどして、さも「あれもできる、これもできる」と訴求範囲を拡げその万能性を謳っていますが、少なくても消費者がイメージするような効果は期待できないと考え、鵜呑みにしてはいけません。もし「万能」が本当に優れたものであれば私たちの生活は万能ツールで溢れていることでしょう。
他に、空気清浄機の弱点・デメリットを挙げるとするならば、空気清浄機はメンテナンス命という点をお伝えしたいと思います。
その仕組みについては前述しましたが、空気清浄機は空気を循環させるため、機器内部が不衛生な状態(*1)になると、そこで発生した菌などが意図せず部屋全体に拡散される仕組みでもあるため、定期的なメンテナンス(フィルター清掃等)は必須です。

(*1)加湿機能が搭載されている空気清浄機について
特に加湿機能が搭載されている空気清浄機は注意する必要があります。
加湿機能部分はカビに汚染されやすく、カビを放置することでカビ菌が内部で繁殖し、いずれは空気を循環させる機器的構造によってカビが対象空間に拡散するケースも少なくありません。

菌の除菌やウイルスの不活化に関してはまるっきり効果がないというわけではなく、多少は有効です。有効ではありますが、表現(プラズマクラスターやナノイー等)は別にして、それは微量に発生しているオゾンの効果であることが分かっています。詳しく知りたい方は下記の記事をお読み下さい。

オゾン発生器と空気清浄機の比較

それでは、オゾン発生器と空気清浄機について比較表をみていきましょう。

オゾン発生器空気清浄機
除菌×
脱臭
花粉除去×
チリやホコリの除去×
害虫対策×
ウイルス不活化
メンテナンス多くがフリーメンテナンス定期的なフィルター清掃等
1層フィルターでも1.2ヶ月に1回
2〜3層フィルターであれば週1回が理想
有人環境での使用できる(*1)できる
交換部品2〜4年に1回程度放電管を交換するのが理想複数のフィルターを定期的に購入・交換しないと効果は著しく低下する
本体サイズ・重量
空気清浄機と比較して小型・軽量
使用時のみ取り出して利用することが可能

大きく、重い。
据え置き利用がメインのためスペースは継続的に確保する必要がある。
本体価格数千円〜数万円数千円〜数万円
(*1)家庭用の製品に限ります。

お気づきの方も少なくないと思いますが、オゾン発生器が得意なことは空気清浄機にとって苦手であり、逆に空気清浄機が得意とすることはオゾン発生器にとっては苦手なことなのです。

以上のことから、オゾン発生器と空気清浄機はそれぞれ異なる目的の優れた機器のため、2台併用するのが最善であるという結論です。

どちらか一方の機器だけを使用するより併用したほうが圧倒的にクリーンな環境になることは間違いありません。
ポイントは「花粉も除去できるオゾン発生器」や「脱臭機能付きの空気清浄機」など、専門家からすれば違和感がある一見便利そうなオールインワン製品ではなく、オゾン発生器と空気清浄機を1台ずつ購入して、併用することでそれぞれのメリットを最大限に引き出せるという点です。