オゾンを最も簡単に説明すると、このようになります。

  • 酸素に似た気体である
  • 強力な殺菌作用がある
  • 毒性があり人体に直接浴びると危険だが、時間が経つと酸素になって無害になる

しかし、これだけで「オゾンの事実」を理解することはできません。
医療界や食料品業界では、強力な殺菌作用に注目して、オゾンで効率よく現場を消毒しているところがある一方で、上記の3点を知っていても毒性を過剰に警戒してオゾンの使用を避けているところもあります。
オゾンの知識を独自に解釈してしまうと、事実からどんどん遠ざかってしまいます。そこで企業の経営者やビジネスパーソン、衛生意識が高い一般の方々には、この記事をお読みいただき、オゾンの基礎知識を獲得して、オゾンに関する理解を深めていただければ嬉しく思います。
事実を知れば、オゾンが衛生管理に有効な価値ある物質であることを理解していただけると思います。

オゾンの簡単な化学的な話

オゾンの語源は、ギリシャ語の「臭う(におう)」という意味の「ozein」です。オゾンはその名のとおり、いわゆる「オゾン臭」と呼ばれる独特な臭いがします。オゾンの物質としての特徴を紹介します。化学的な話になりますが、専門用語に解説を加えながらわかりやすく説明していきます。

オゾンは酸素の「親戚」

オゾンは、3つの酸素原子(O)からなる気体で、化学式は「O3」です。オゾンは、酸素原子2個の酸素(O2)の同素体です。
同素体とは、同じ原子で構成されながら、原子の配列や結合の仕方が異なる物質どうし)のことです。
オゾンと酸素が同じ原子で構成されていることから、オゾンは酸素の「親戚」といえます。

酸素からオゾンをつくり、酸素に戻る

オゾンは自然界にも存在しますが、業務で使うオゾンは、機械を使って酸素から生産します。
酸素に電気を当てると、次のような変化が起きます。

3O2→2O3

3個の酸素から2個のオゾンができます。
つまり、こういうことです。

3個の酸素から2個のオゾンができる

オゾンの構造は不安定であるため、放置しておくと酸素に戻ってしまいます。
そのときの化学式は、先ほどの逆になります(2O3→3O2)。

自然界のなかのオゾン

酸素に電気が当たるとオゾンができるので、雷の放電によって、自然界の空気中でもオゾンが発生します。
また、太陽光に含まれる紫外線の刺激でも、酸素がオゾンに変わります。

出典:fanfun.jaxa.jp

自然界で最もオゾンが多く存在する場所は、成層圏にあるオゾン層で、濃度は10ppm(0.001%)になります。
成層圏は上空10~50キロの空間です。1ppmは100万分の1という意味です。
紫外線が酸素に衝突してオゾンに変わるとき、紫外線の力も弱まります。そのため、オゾン層は、人にとって有害になる紫外線をカットしてくれます。

地上にもオゾンは漂っていて、その濃度は0.005ppmほどです。森林に入ると濃度が0.01ppmぐらいまで高まります。

さらに詳細な化学的な話

オゾンのその他の化学的な情報は次のとおりです。

  • 分子量:48
  • 常温での気体の色:薄い青色
  • 臭い:あり
  • 沸点:-111.9度
  • 融点:-192.5度
  • 密度:2.144㎏/㎥(0度の時)

「酸化」が「毒性と殺菌」という両極端な性質を生む

「酸化」が「毒性と殺菌」という両極端な性質を生む

オゾンには、毒性という人にとってやっかいな性質と、殺菌作用という人にとってありがたい性質が同居しています。
毒性は、50ppm以上の高濃度オゾンを人が大量に浴びると、1時間で命の危険に陥るレベルです。

有人環境で使用する家庭用オゾン発生器では0.03ppm程度、無人環境で使用する業務用オゾン発生器でも0.8-2.0ppm程度の濃度環境が目安なのでご安心下さい。

オゾンの殺菌作用は、塩素よりはるかに強く(※)、ウイルスや細菌を確実に殺します。
この両極端のオゾンの性質を生み出しているのは、酸化作用です。
※オゾンはフッ素に次いで殺菌消毒作用が強く、塩素の約6倍。

電子が移動して錆びて劣化する

酸化とは、酸素に触れた物質が電子を失う現象のことです。
時間の経過とともに鉄が錆びたり、食べ物の鮮度が落ちたりするのは、鉄や食べ物を構成する原子の電子が空気中の酸素に移動することで起きます。
生物の生存に欠かせない酸素には、物質を錆びさせたり劣化させたりする「悪者」の一面もあります。

酸化で細胞が破壊される

オゾンは酸素の「親戚」なので、物質を酸化させる力があります。
酸化の錆び効果や劣化効果は、オゾンの毒性と殺菌作用に深く関わっています。物質が酸化するとき、その物資の細胞膜や細胞壁が破壊されます。

破壊された細胞は死滅します。細菌やウイルスの細胞が破壊されれば、それは殺菌と呼ばれ「よい現象」と評価されます。人の正常細胞が破壊されれば、それは毒と呼ばれ「悪い現象」と非難されます。

酸素よりオゾンのほうが酸化が強い

酸素にも酸化作用があり、物質を錆びさせたり劣化させたりしますが、破壊力ではオゾンのほうがはるかに上回っています。

酸素とオゾンは親戚どうしなのに、なぜ酸化のパワーに差が生じるのでしょうか。酸素の酸化が、オゾンより弱いのは、酸素が安定しているからです。
酸素は「O2」のまま変化しにくいので、酸素原子(1個のO)が生まれにくく、酸化がマイルドにしか起きません。

一方のオゾンは不安定な存在なので、すぐに「O3(オゾン)」から「O2(酸素)」になろうとします。
このとき酸素原子(1個のO)が生まれ、これが次々酸化を引き起こしていきます。酸素原子はときに、細菌を遺伝子レベルで破壊します。結核などの病気を治す医療機関に、サナトリウム病院がありますが、その多くは自然豊かな場所に建っています。森のなかや林間部のほうが、都心より多くのオゾンが漂っていて、殺菌効果が得られるから、とされています。

オゾンの知るべき5つの特徴

特徴=良いことばかりではありません。
「特有臭気がある」など、ここでは一般的に人に好まれない部分も含め「オゾンの特徴」としてご紹介します。

特徴説明
除菌力が高いオゾンの除菌力は、フッ素に次ぐもので、塩素の6〜10倍程度だといわれています。
もともとオゾン発生器という機器は、宿泊施設や自動車関連業などを中心に消臭や除菌目的で使用されるシーンが大部分でした。ニオイのもとは往々にして雑菌の増殖が主な原因ですから、雑菌を確実に除菌することによって、悪臭も抑制され、それが消臭につながります。
広範囲の菌やウイルスに効果があるオゾンは、アルコールや次亜塩素酸同様、かなり広範囲の菌やウイルスに高い効果があります。たとえば、アルコールはノロウイルスにはほとんど効果を示しませんが、オゾンはノロウイルスにも非常に効果が高いため、飲食店や食品工場などでも利用されています。食中毒の原因菌とされる大腸菌・セレウス菌・サルモネラ菌・腸炎ビブリオなどにも絶大な効果を発揮します。
残留性がないオゾンは高い除菌力を有しながらも、残留性がないことから、きわめて安全性が高いとされ、厚生労働省が指定する食品添加物としても認められています。しかし、あらゆる場面で、「残留性がない=ポジティブ」「残留性がある=ネガティブ」とは限らず、残留性が求められる現場(水道水等)もあります。ここでは、客観的な事実として、「オゾンには残留性がない」という特徴があることを覚えておいて下さい。
特有臭気がある人の嗅覚には個人差があることと、そのオゾン濃度にもよりますので、一概にはいえませんが、よく言われるのは「プールの消毒臭に近い」「酸素系の漂白剤の臭い」などの感覚が代表的です。
濃度によっては健康被害を受けるとはいえ、これは当たり前の話しです。何故か多くの方が思い込んでいるようですが、実はこの世の中に「安全な物質」などありません。そこにあるのは、「安全な物質」ではなく、「安全な量」や「安全な濃度」です。もちろん、水や酸素すら、濃度や摂取量によっては最悪死亡することもあります。だからこそ、業務用・家庭用に関わらず、きちんと理解したうえでオゾンを活用されて下さい。
オゾンの知るべき5つの特徴

オゾンのメリットとデメリット

さて、先にオゾンの知るべき特徴として5つご紹介しましたが、「除菌力効果が高く、厚生労働省が指定する食品添加物にも認められている安全性の高さがあるなら、良いことばかり」だとは思わないで下さい。

物事には常にメリットとデメリットが存在し、それはオゾンについても同じことがいえます。客観的な視点からオゾン消臭除菌のメリット・デメリットをご紹介しますので、それらを理解したうえでオゾンを上手に活用されて下さい。

オゾン消臭除菌のメリット

オゾン消臭・除菌のメリットは次のとおりです。

  • マスキング(一時的に包み隠す)をメインとする消臭芳香剤とは異なり根本から消臭除菌が可能
  • 細菌を溶解するため遺伝子が変化した耐性菌を作らない
  • 短時間で分解され有害な残留物を残さない
  • 残留物を残さないため、使用後、洗浄や拭き取りなど作業の手間が省ける
  • オゾンの除菌効果はほぼ全ての菌に対して強力にその効果を発揮する
  • トリハロメタン等の有機塩素化合物を作らない
  • 除鉄、除マンガンが容易
  • オゾン発生器さえあればオゾンを生成するために必要なものは酸素と電気のみ(超低コスト)

オゾン消臭除菌のデメリット

オゾン消臭・除菌のデメリットは次のとおりです。

  • 残留性を必要とする分野(例えば水道)では単独で使用できない
  • オゾン発生器の購入がイニシャルコストとして必要
  • 物質としての有害性があるためオゾンの特性を多少なりとも理解する必要がある

イラストで簡単に理解できるオゾン消臭除菌の仕組み

イラストで簡単に理解できるオゾン消臭除菌の仕組み

オゾン(O3)の内の1つのOが大気中の何かと反応して元の酸素(O2)に戻ろうとするときに生じる発生期の酸素(O2)が、非常に強い酸化力を持ちます。そのため、ニオイ物質や雑菌と反応することで消臭、除菌、漂白等に活用されています。

市販の消臭・芳香剤、殺菌剤・消毒剤と決定的に異なる点は、オゾンはニオイのもととなる物質を直接分解するので、きわめて高い消臭除菌効果が期待できる点です。

また、オゾンは、電気の力を加え、人工的に作り出すことができます。

酸素原子の「O」は、「O」単体で存在することはなく、常に2つの「O」がくっついて1セット(O2)となり、存在します。

酸素に電気の力を加える

そこに電気の力を加えると、2つの「O」が一度バラバラになります。

電気の力で一度バラバラになる

酸素原子「O」は、すぐに別の酸素原子「O」とくっつこうとします。
しかし、そのとき2つの「O」ではなく、3つのOがくっついて「O3」を形成します。これが「オゾン」です。

O3を形成

3つの酸素原子「O」がくっついて「O3」となるわけですが、この3つの内の1つの「O」が2つの「O」から離れよう離れようとします。これを「物質の不安定性」といいます。
2つの「O」から離れた1つの「O」は、菌やウイルスを見つけると、決死覚悟のアタックをします。

菌やウイルスに酸素原子がアタック

決死覚悟のアタックをした1つの「O」はその後、アタックした菌やウイルスを道連れにして自らも消滅します。

残ったのは、2つの「O」ということになりますが、酸素原子である「O」が2つ残ってくっついているわけですから、これは「O2」ということになり、皆さんご存知の「酸素」ということになります。

つまり、オゾンを利用し、消臭除菌をした場合、あとに残るのは「酸素(O2)だけ」ということになるのです。

これが、「オゾンは残留性がないから安全である」という理由であり、だからこそ、オゾンは国からも「食品添加物」として認可されているというわけです。

オゾンの効果

オゾンの除菌効果
効果説明
消臭・脱臭効果悪臭の原因は主に「菌の増殖」です。
よって、菌の増殖を抑止するか、もしくは減らすか、死滅させることで悪臭問題は改善、あるいは完全に解決することが可能です。悪臭問題の解決は、オゾンと次亜塩素酸ナトリウムがもっとも適しています。
ただし、次亜塩素酸ナトリウムは残留性の問題があるため、安全性が高く求められる環境における作業では、オゾンが使用されるケースの方が多いです。
除菌・殺菌効果オゾンは広範囲の菌やウイルスに対し高い効果を示し死滅することができます。
ちなみに、菌を殺すことは殺菌、ウイルスを感染できない状態にすることは不活化または不活性化といい、「ウイルスを殺す」とはいいません。ですので「死滅」とは菌は殺菌、ウイルスは不活化させることを意味しているとご理解下さい。
代表的な菌に対する効果でいうと、大腸菌、ブドウ球菌、クロストリジウム パーフリンジェンス、コクシジウム、真菌(カビ)、枯草菌などに効果があります。
ウイルスでは風邪の原因となるウイルス全般(ライノウイルス、コロナウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルスなど)、アルコールではほぼ効果がないノロウイルスやその他犬パルボウイルス、鶏脳脊髄炎ウイルスなどにも不活化効果があります。
忌避効果と繁殖抑制効果糞中の化学物質が仲間との情報交換機能になっている虫や動物は数多くいますが、私たちに身近な存在としてその代表例が「ゴキブリ」「ダニ」「小バエ」などが挙げられます。
この「糞中の化学物質」のなかには、繁殖活動に欠かせないフェロモン分泌物だけではなく、安全や危険を知らせるための情報交換機能に相当する物質も含まれているといわれています。
オゾンは、そんな「糞中の化学物質」を分解するため、ゴキブリ・ダニ・小バエは繁殖活動に支障をきたし、また情報交換機能も失います。
これによって、ゴキブリ・ダニ・小バエの繁殖を大幅に減らすことができます。
鮮度保持効果残留性がないため、その安全性の高さからオゾンは厚生労働省が定める「食品添加物」に認められています。
そのため、野菜や果物の農薬洗浄(特にカット野菜にはオゾン水が使われていることが多い)などにも利用されています。
洗浄はもとより、野菜や果物をオゾン水で洗浄したり浸けたりすることで鮮度が保持され、また野菜や果物本来の自然で鮮やかな色を長時間持続させることが可能です。最近では、野菜や果物だけではなく魚介類などの鮮度保持にオゾンやオゾン水が利用されている場面を見かけることが多くなりました。
防カビ効果床、壁、浴室などに発生、付着するカビに対しても、オゾンの強力な除菌力でカビ菌を死滅させ防カビ効果を発揮する。また、ヌメリや黒ずみも抑えることができます。オゾンは不動産屋さんやリフォーム業者さん御用達なのです。
漂白効果オゾンは酸化力が高く、綿の色素を分解して漂白することができます。この漂白方法は、室温で処理できるため、エネルギー消費量や薬品使用量の低減が期待されています。また、越後地方では、春先の晴天時に雪の上に糸や布を広げて漂白する「雪晒し」が行われています。雪晒しは、雪の表面に紫外線が当たって発生するオゾンの作用を利用した漂白方法です。
オゾンの効果と説明

その他も、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの黄色ブドウ球菌やインフルエンザウイルスにも効果があるため、院内感染予防目的でオゾン(発生器)が利用されたり、シックハウス症候群対策などにも有効です。

シックハウス症候群の原因で、有害なホルムアルデヒド(ホルマリン)は、オゾンによってギ酸と酸素に分解されます。ギ酸は刺激臭のある物質ですが、オゾンでさらに酸化され炭酸に変化するので、消臭作用とともにホルムアルデヒドにも高い効果を示します。

非科学的な情報にご注意ください

美容や医療に関する情報を配信する一部のメディアでは、「オゾンで血液がキレイになる」「オゾン水で洗顔すると美白になる」「オゾン水で洗髪すると抜け毛がなくなる」「オゾンでシミが消える」などと何ら根拠を示さず、主張されていることもあるようですが、私の知る限り、それらを科学的に裏付けるエビデンスは今日現在確認できていません。くれぐれもご注意下さい。

消臭除菌するために必要なオゾン濃度

オゾンの消臭・除菌・ウイルス不活化の効果は、高濃度なら短時間、低濃度なら長時間で得られます。
「除菌するために必要なオゾン濃度」といっても、それが家庭レベルの話しなのか、あるいは業務レベルで求められる除菌効果なのかで答えは異なります。

■消臭除菌・ウイルス不活化するために必要なオゾン濃度
一般的に、オゾンを利用した消臭・除菌・ウイルス不活化効果の目安として、家庭レベルでは、0.03~0.05ppm程度で除菌・消臭効果があるとされ、業務レベルでは0.1〜0.9ppmで「除菌レベル」、1.0ppm以上で「殺菌レベル」とされています。

食品添加物に指定されているくらい安全

食品添加物に指定されているくらい安全
食品添加物に指定されているくらい安全

オゾンに対する誤解とは、「殺菌作用はあるが、毒性がある」という理解です。
この「殺菌作用はあるが、毒性がある」という文章には間違いはなく、正しい内容なのですが、言葉のニュアンスを考えると誤解を生む可能性があります。

日本語の文章には、後ろの言葉で前の言葉の意味を弱める性質があります。「AだがB」という文章が伝えるのは、「Aという性質も含まれるが、重要なのはBである」というニュアンスです。

そのため「殺菌作用はあるが、毒性がある」と言ってしまうと「殺菌作用もあることはあるが、オゾンは本質的には毒である」という意味を醸し出してしまいます。これでは、オゾンに詳しくない人は、医療界や食品業界の衛生管理で使う気持ちが失せてしまいます。

衛生管理でオゾンを検討している人は、オゾンのことを「毒性はあるが、殺菌作用がある」と理解してみてはいかがでしょうか。この文章であれば、「オゾンは毒性があるので注意して使用しなければならないが、その注意を払ってでも、オゾンを衛生管理で使う価値は十分ある」というニュアンスが伝わると思います。

ここでオゾンの殺菌性を強調するのは、オゾンが食品衛生法上の食品添加物に指定されるほど、重要で安全な物質であることを「事実」としてお伝えしたいからです。

そもそも食品添加物とは

「無添加食品は素晴らしい」というイメージが広がったことで、その対極にある食品添加物は、悪者のように扱われることがあります。
しかし食品添加物は、現代の食生活においてなくてはならないものです。
もし食品添加物を完全に排除したら、食料品の価格は軒並み高騰し、一部の食べ物はお金持ちしか食べられなくなるでしょう。また、おいしい食べ物は激減するはずです。

食品添加物とは、保存料、甘味料、着色料、香料などの総称です。
厚生労働省は、食品添加物の安全性を食品安全委員会に評価させ、健康を損なう恐れがない場合に限って、成分、規格、使用基準を定めて使用を許可しています。

一般の方がイメージしやすいところでいうと、豆腐を固める凝固剤(にがり/MgCl)、小麦粉から麺を作る時に加えるかんすい(鹹水)、ビールなどの濾過の際に使用する活性炭などが食品添加物の代表例です。

食品添加物は「デメリットはあるものの、そのデメリットを極力減らすことができ、なおかつメリットが大きいもの」ということができます。

オゾンは「既存添加物」という食品添加物

オゾンは「既存添加物」という食品添加物

食品添加物には、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物の4種類があります。
オゾンは既存添加物に含まれます。
既存添加物は、長年使われた実績があり、厚生労働大臣が認めたものです。日本食品化学研究振興財団が公開している既存添加物名簿にはオゾンを含む357品目が収載されています。
オゾンは、安全に使える食品添加物としての実績がある物質です。

オゾンの食品添加物としての安全性を、政府として認定しているのは日本だけではありません。アメリカのFDA(食品医薬品局)も、オゾンを食品加工に使用することを「一般的に安全と認められる行為(Generally Recognized As Safe)」と認定しています。

残留性がないことのメリット

残留性がないことのメリット

オゾンの殺菌作用だけを活かし、衛生管理で安全に使うには、適切に扱う必要があります。
例えば、自動車が便利な道具になるのは、走らせたあとに確実に停止させられるときに限ります。機械ミスで暴走してしまったり、誤った運転をしたりすると、自動車は、時速100キロで走る1トンの凶器になります。
オゾンも自動車と同じように、殺菌作用だけを使うためには、毒性を確実に制御する必要があります。
ただ、オゾンを適切に扱うことは難しくありません。オゾンには残留性がないという長所があるからです。

数時間でほぼ消える

オゾンは、20~30分で濃度が半減し、数時間でほぼ消えます。オゾンは大気中に含まれているくらいなので、衛生管理の現場でも完全にオゾンを消し去る必要はなく、「ほぼ消えた」状態であれば問題ありません。

こうした性質を「オゾンには残留性がない」といいます。
残留性がないということは、後処理に気を使わなくてよいということです。
残留性のなさは、オゾンのような「便利な物質」にとって大きなメリットを生みます。

便利なのに取り扱いがラク

多くの公害は、便利な物質の残留性の高さによって引き起こされてきました。
例えば、電池、計測機器、薬品、照明器具、塗料などに使われる水銀は、便利な物質の代表格ですが、残留性が高いために使用後に特殊な後処理をしないと人体に甚大な悪影響を与えます。水俣病は、水銀の残留性によって引き起こされました。

またアスベスト(石綿)はかつて、3,000種類もの工業製品になり、人々の生活になくてはならない存在でした。それはアスベストが、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性に優れ、そのうえ安価だったからです。

しかしアスベストは、じん肺や悪性中皮腫、そして肺がんを引き起こす危険があることがわかりました。アスベストは今、使うことだけでなく、製造も輸入も、譲渡も提供も禁止されています。
殺菌性を発揮したあと、放置しておけば自然に酸素に変わっていくオゾンは、便利な物質のなかでは珍しい「取り扱いが楽な便利物質」ということができます。

日本産業衛生学会は、作業場におけるオゾン濃度の許容範囲を0.1ppm(※)としています。つまり、空気中のオゾン濃度をそこまで薄めれば、人にとって安全である、ということです。
※これは有人環境下の基準であり、無人環境で行う殺菌消毒作業は1.0ppm超の濃度で行われるのが一般的です。

多くの分野で活用されている

多くの分野で活用されているオゾン発生器

オゾンは多くの分野で活用されています。
特に利用が活発なのが、宿泊施設業、自動車関連業、医療、福祉、食品、農業、漁業、畜産、上水処理などの分野です。
オゾンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、O-157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カビなどを100%殺します。

このような細菌やウイルスは、体内に入ると重大な健康被害をもたらします。それで、体調が優れない人が多くいる病院や介護施設、食べ物を扱う食品工場や農場、市場といった施設でオゾンが使われています。病院や介護施設の場合、便臭が課題になることがあるので、オゾンの消臭効果も重宝がられています。

耐性菌をつくらない

出典:国立国際医療研究センター

オゾンは耐性菌をつくりません。
耐性菌とは、殺菌剤や除菌剤が効かない細菌のことです。
例えば、抗生物質は、さまざまな有害菌を殺すことから現代医学で最も重要な薬の1つと考えられています。しかし、特定の患者に抗生物質を使い続けると、その患者の体内に耐性菌ができてしまい、次第に抗生物質が効かなくなります。
耐性菌は、細菌の「知恵」といえます。
細菌は、殺菌剤や除菌剤によって消滅の危機にさらされると、知恵を使って生き残ろうとします。その答えが耐性菌です。
耐性菌はさらに、感染という知恵も持っています。耐性菌が発生すると薬剤が効かなくなるので、耐性菌を持った人は死んでしまいます。人が死ぬと、耐性菌も存続できません。そこで、人から人に感染することで、耐性菌は生き延びようとします。

オゾンは細菌やウイルスを構造的に破壊することから、耐性菌をつくる「スキ」を与えません。事実上、オゾンの殺菌効果(ウイルスは不活化効果)がある細菌やウイルスに対して、オゾンが効かなくなることはありません。

オゾン消臭除菌の利用シーン

オゾン消臭除菌の利用シーン

オゾン除菌の利用シーンは、きっと一般の方が想像するより多くの業種・現場で活用されています。その理由は、少し前までは、オゾン発生器が高額で中小規模の企業や団体、施設に導入することはコスト的に難しい面がありましたが、あの忌まわしき「コロナ禍」に突入した2020年頃から、業種問わず、感染症対策としてオゾン発生器の導入が急増しているからです。
もともと業務用オゾン発生器の需要が高かったホテルや旅館等の宿泊施設業(最近では民泊事業者も多い)や自動車関連業、清掃関連業だけではなく、不動産関連業や医療福祉関連業、ペット関連業、学校等の教育施設など、多岐にわたります。

ニオイのもとは、ほとんどの場合、雑菌の増殖ですから、除菌をすることで菌が大幅に減少・または消滅し、悪臭の原因がなくなり消臭されます。
またオゾン濃度が低濃度であっても、新型コロナウイルスを不活化することが証明されているように、一般家庭で常時稼働させるオゾン発生器であっても十分感染症対策になり得ます。

まとめ~基礎知識を増やして事実を見極める

「オゾンの殺菌効果は魅力だが、毒性のコントロールが大変そうだ」このように思うと、オゾンを自分の仕事現場で使おうとは思わないでしょう。

「オゾンの毒性をコントロールすれば、あの殺菌作用を活用できる」
このように考えると、オゾンを自分の職場に導入したくなるでしょう。

毒性と殺菌作用は、オゾンの二大特性ですが、その知識だけでは「オゾンの事実」をとらえることができません。

オゾンが酸素の「親戚」であったり、しばらくすると酸素に戻ったり、食品添加物として認定されていたり、残留性も耐性菌もなかったりすることを知れば、オゾンの有用性の高さが事実であるとご理解いただけたはずです。

今回は気体のオゾンをメインに説明しましたが、液体の「オゾン水とは」もよろしければご覧下さい。